カードも流されてお手上げの被災者たち
東日本大震災から2カ月以上たってやっと義援金の配分や仮設住宅建設・入居が始まりました。それにしても未曾有の大災害で、被災者の被った物的・心理的な損害は甚大なものでした。とくに津波に遭遇した人たちは、家を流されただけでなく、現金やカードもなくしてしまい着のみ着のままの避難生活を強いられています。勤め先(漁場も含む)も流され収入がゼロという人も多くいます。そのためカードの支払いができなかったり、再発行の手続きもできないので、避難所でその日暮らしを続けているのです。
支払いを猶予してほしいという要望が多い
カード会社はそうした人のために、大震災直後からコールセンターを設けてカウンセリングを実施していますが、引き落とし日が近づくたびに問い合わせの件数が増えるといいます。なかでも多いのが「カードの支払い猶予」についての質問です。たしかに手持ちの現金もない状態ですから、口座にはお金がありません。返済したくてもできない被災者が多いのです。そのため、カード会社は、請求が立ち、支払いがなくても今のところは、督促を見送っている状態といいます。クレディセゾンは被災者救済のために4月6日の支払いを無条件に5月6日にスキップ(1カ月の支払い猶予)する手立てを講じました。他社も個別に対応しています。
しかし、それでも状況が改善したという話を聞きません。今のままで行くと、6月も、7月も難しい状況になりそうです。こうしたときこそ、個社が独自に対策を講じるのではなく、日本クレジット協会などの業界団体が先頭に立って、「すべてのクレジットカードに関して7月いっぱいまでスキップを実施する」といった統一的な救済策を示すべきだと思うのですが、どうでしょうか。
ローンやキャッシング利用の要望も強まっている
2カ月をすぎて仮設住宅の入居が増えるにつれて、ローンやキャッシングの希望が増えています。仮の住処が確保できたので、次ぎは家具や家電を揃えようというのです。それに対してもカード会社は対応していますが、これにも問題があります。先の阪神大震災のときには、利用者の希望する額を貸し付けることができましたが、改正貸金業法の施行によって、今回は年収の3分の1しか貸し出せなくなったからです。さらに、ほとんどの人が返済の目処がたたないうえ、職を失っているため、貸付の対象になりません。そうした人に対して金融庁は例外規則として10万円までの貸付は認めています。
改正貸金業法が足かせになって復興を妨げている
そこで、カード各社はその制度を適用しようとするのですが、その際もこまかな手続きがあって、スムーズにはいきません。もたもたする間に借り手の意欲が失せてしまいます。これではいつまでたっても被災者は救われないし、復興もままなりません。そこで、関係者が動いて金融庁に要望したところ、簡単手続きで、10万円までの借り入れができるようになりました。しかし、10万円では家具や家電製品を買えばすぐになくなってしまいます。阪神大震災のときには、各自の事情に合わせて10万円、20万円、30万円、50万円などと借りることができたのに、今回はそうした柔軟性がなく、最低のレベルでの貸出しに終始しています。つまり、法律がカード会社の自由を縛って、結果的に利用者もカード会社も不満を募らせる状況となっているのです。
本来ならこういうときには行政当局は規則の改正をするとか、特例を設けるなどの計らいをすべきところですが何の動きもありません。こうした硬直した姿勢が被災地の復興を妨げ、さらには日本経済の失速、没落を早めていると思うと残念でなりません。
業界挙げて復興支援キャンペーンを展開してはどうか
また、自粛の嵐の中で消費の低迷が心配されています。カード業界もその流れに追随していては自分で自分の首を締めるようなものです。ここはカードで消費を喚起する対策を考えるべきです。有効策として、三菱UFJニコスがはじめた復興支援キャンペーンが評価できます。エントリーするだけで被災地に10円寄付できるほか、ポイント名人でショッピング利用すると、5000円にごとに10円の寄付というスキームですが、カードを使うことがそのまま復興支援になるのですから、消費を喚起するのにもっともよい方法といえるでしょう。できればここでも業界団体が音頭を取ってカード業界全体に広げる動きをみせてほしいものです。

